#239

 「歩くのって楽しいか?」
 「歩くこと自体は楽しくないよ。足も腰も痛くなるし、疲れるしね。でもね、歩いていると
  不思議な事に『楽しいこと』の方から寄ってくるんだよ。」


 昨日と今日で15キロ歩く。
 ただ歩くだけだったらおもしろくも何ともない。でも不思議な事に本当に『楽しいこと』の
方から自分に寄ってきているような事が起きるし、特に写真を撮りながら歩いていると、思い
がけない光景に、素晴らしい風景に出会ったりする事ができる。
 撮った時には気が付かなかったものが写っていたり、思っていた以上にキレイに撮れていた
りするとまたそれが楽しい。キレイの基準は自分本位だけれども…。


 


 5月4日の最後に出会った野性化(?)した藤の花。藤棚に綺麗に整然としている藤の花は
お淑やかで綺麗だけれども、こんな野性化した藤の花は、ダイナミックで、力強くて、それは
それで美しさを感じてしまう。


 


 今日は10キロ歩くつもりはなくて、5キロほど歩いたら帰ろうと思っていたのですが、
何かに引っ張られるように、もう少し歩いてみようかと思って2キロほど歩いたところで、
素敵な素敵なファミリーに出会った。


 


 東京では、白鳥を見るだけでも大変なことなのに、ここではファミリーに出会う。雛たちを
かばいながら親鳥が前後、左右に動いている。そんなのお構いなしに雛が水面を動き回ってい
るのを見ていると、子育てというのは大変なんだろうなと感じる。
 白いモコモコの羽を見ていると、思わず触りたくもなるのが心情だけれども、そこはやはり
遠くで見守るのがルール。元気に育って、また来年ここにやって来てくれることを願うばかり。


 結局、10キロ近く歩いた。少しばかり気温は高かったけれども、風は爽やかで、あまりの
心地よさに、途中の休憩で20分ほどウトウトしてしまった。でも途中で20分、ウトウトと
しなければ、半ばで引き返して、白鳥のファミリーに会うこともなかったし、金色にキラキラ
と輝く夕暮れを向かえることもなかった。