#260 ほらね

窓から見えた青空に、大きな白い雲が流れていくのを見て、早く外に出たかった。
外に出てからも、青い空に流れてゆく雲が気になって仕方がなかった。
時折、空を見上げて、暑かったけれど、ヘルメットの中はムレムレだったけど、髪の毛は汗でびしょ濡れだったけど、
妙に気持ちがよかった。


『ほらね。』


仕事が終わって帰り道。
ビルの間の長方形の青空に大きな雲が流れていった。
大きな雲が風に吹かれて、流されて、高層ビルをひと飲みしそうな勢いだった。


 


日没まじかの隅田川。
大好きな場所から、大好きな街の空を眺める。
徐々に青から藍になり始めた空に雲が最後の一筆を入れる。
風の力を借りて、大きく大胆に筆を入れていく。
日没前の太陽の力を借りて、雲はきらきらと光り輝いている。



西280°の空に陽が落ちて、街に灯りが灯る。
その頃にはすっかり雲も消えてしまって、藍がより深くなる。



『ほらね、やっぱり東京の夏は風が頼り。』
沈みかけの月がそう呟いていたような気がした。



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