#304 洛北、紅に染まる

先週、職場の仲間が京都に紅葉を見に行ってきたと言っていた。
紅葉の季節の京都の人手のピークは11月20日頃だったと思うが、それでも、
かなりの人手だったらしく、清水寺のライトアップも相当な混雑だったらしく、
「写真ブレブレですよ...」と苦笑いをしていた。


私が京都に紅葉を見に行ったのは4年前。
友人の案内で出町柳から叡山電鉄鞍馬線に乗って鞍馬寺に連れて行ってもらった。
高野川と平行するように走り、2両編成の電車は途中から単線になる。
まったりと電車に揺られながら、車窓からの風景は町並みから徐々に山間の風景
に変わっていく。
「ここいらへんからな、電車がゆっくり進んでくれるねん。」
友人の言う通り、車窓から一番きれいに紅葉を見る事ができるポイントで、電車
は、速度を落として、ゆっくりと進んでいった。
電車を包み込むように、真っ赤に染まった紅葉樹のトンネルが印象的だったし、
太陽の光に反射して、車内が薄らと赤く染まってもいた。



叡山電鉄鞍馬線 2006.11.24 DOCOMO P506iC


途中、無人駅で一旦、電車を降りた。
電車を降りたのは私たちだけだった。
電車が再び走り出して、徐々にその音が消えていくと、鳥の歌と緩やかに通り
過ぎる風の声が、いつまでも、どこまでも響いていた。
空を見上げると、赤、黄、オレンジ、緑の葉、そして空の青が重なり合って、
混ざり合って、キラキラと輝いていて、こんな紅葉を見たのは初めてだった。
どれくらいの時間居ただろうか。
上りと下りの電車が一本ずつ通り過ぎて行ったと思う。


 
叡山電鉄鞍馬線 2006.11.24 DOCOMO P506iC


鞍馬寺の紅葉も素晴らしかったけれど、途中の無人駅から見た葉の煌めきと
鳥たちの歌声と風の通り過ぎる声が4年経った今でも昨日のように思い出される。
毎年、また行きたいなと思いつつ、今年もその機会を逃してしまった。
日常が忙しいと言い訳をして、自分に言い聞かせている自分が情けない。
そう思って、今回は冬のあの無人駅に行ってみたいと思っている。
何に出会えるか、何も出会えないかもしれないけれど、きっと素敵な風景を
見せてくれるだろうと思う。
できれば、電車の中から一瞬だけ見えた猿にでも会えたら最高かもしれない。



鞍馬寺 2006.11.24 DOCOMO P506iC