#279 土に生まれ、土に帰す

昨日も書いたけれど、今年はよく蝉の亡骸を目にする。
特に蝉が好きって訳でもないし、注意して見ている訳でもない。
気がつくと、足下に落ちている。
そんな時は、公園の植え込みや、ご迷惑だとは思うが、人様の
お宅の植え込みの土の上にそっと置かせてもらう。
『土に生まれたもの、土に帰る』ではないけれど、せめて最後の
時を生まれ故郷で迎えさせたい。
端から見れば間違いなく変なヤツだけれども、なぜだか今年は、
そんな気持ちの上に夏を迎えている。


今日も銀座、新橋を抜けて、汐留近辺を歩き、ふと足下を見るとやはり蝉が落ちていた。
「すでに息絶えたのか、アスファルトの上じゃいくらなんでもなぁ」と思い拾い上げようとすると、
弱々しく鳴き、微かに羽を動かした。
背中も、お腹も白くなり、もうすぐ死んでしまうんだなと思いながら拾い上げると、最後の力を振り
絞っているのだろうか、私の親指に力強くしがみついてきた。
普通であれば、すぐに飛んでいってしまう状況だけれども、動こうとせず、しがみついているのが
精一杯だったのだろう。
そのままゆっくりと近くの植え込みの木に留まらせた。
ここであれば、たとえ息絶えたとしても、土の上には帰れるだろうから。


大地に生きるものたちは、いつかは必ず土に帰る。
それは人間とて例外ではないと思う。



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